こんにちは、ほしクズです。
今回お話する内容は、認知症ケアについてです。特に今回は、「行動・心理症状(BPSD)」へのアプローチを中心とした認知症ケアについて解説していきます。
介護職員にとって、認知症の方の介護は負担が大きいものです。特に介護職員とって負担・困難に感じるのが、認知症の方の約90%に出現すると言われている「行動・心理症状(BPSD)」ではないでしょうか?
「行動・心理症状(BPSD)」とは、脳の機能が低下することで中核症状と言われる認知機能障害を引き起こし、そこに周囲の環境やその時の心理状態によっておこる症状です。
例えば...
○物を盗まれた ○幻覚が見える ○大きな声を急に出す、叫ぶ ○人を叩こうとするなど、攻撃的な様子が見られる ○介護を強く拒む
このような症状のことです。日頃の介護を思い浮かべて見ると、経験したことがあるものが含まれていると思います。そして、これらの症状が、認知症の方に対するケアを困難にしている場合が多いのではないでしょうか?
この記事では、そんな「行動・心理症状(BPSD)」へのアプローチを中心とした認知症ケアについて解説していきたいと思いますので、認知症ケアを学びたい、施設の認知症ケアを見直したいと考えている方は、参考にして頂けると嬉しいです。
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認知症ケアの「見える化」がされることにより、成果を実感する事ができる
認知症ケアに対する自信を持つことができ、モチベーションアップにつながる
経験や感覚に頼った評価ではなく、共通のツールを用いて評価が行えるため、ケアに対する考え方を共有できる
ケアの内容がわかりやすく、経験を問わず誰でも実践できる
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認知症の方の行動・心理症状をどう捉えるか
認知症ケアにおいて、行動・心理症状に対する関わりは負担も大きく、難しいものとされています。介護への強い拒否や、攻撃的な言動に戸惑うことも多いでしょう。
こういった状況に対して、どのような視点で捉えていくかというのが、認知症ケアや行動・心理症状に対するアプローチのスタートになります。周囲がどのように捉えるかによって、その後の状態変化に大きく影響を与えます。
このような状況の場合、大きくふたつの視点に分かれます。
認知症の方による不可解な問題行動と捉える
認知症の方が何らかの苦痛によって苦しんでいる
認知症の方の不可解な問題行動として捉える
認知症の方の問題行動として捉える考え方は、認知症ケアに対する理解が進む前に行われてきたものです。この考え方では、目の前で起きている行動をいかに抑えるかについて考えます。
具体的には、抗精神薬の投与や場所を移動する、居室に入れておくなどになります。エスカレートすれば、拘束や隔離に繋がっていく行為です。
目の前の行動を抑え込もうとするあまり、その行動が酷くなれば、さらなる抑制を生んでしまう可能性があるケアになります。
意味のある行動として捉える
意味のある行動として捉えることで、その行動の意味や背景にある精神的・身体的な苦痛に気づき、適切なケアを行うことによって症状が改善につながる可能性があります。
認知症の方に対して、その気持ちに寄り添い、ニーズを把握して、今後のあるべき対応について検討していくことができます。
行動・心理症状(BPSD)へのアプローチのポイント
行動・心理症状に対するアプローチを行うにあたって3つのポイントを紹介していきます。
①行動・心理症状を認知症の方からのメッセージとして読み解くこと
②ケアに関わる人たちの意識や視点を統一すること
③認知症の方に対するケアが、その方のニーズに合っているのかを検証し、PDCAを繰り返すこと
認知症の方からのメッセージとして読み解くこと
認知症の方のケアに苦労している事業所の多くは、その行動を抑えようとしている可能性が高いです。行動を抑えるあまり、行動・心理症状がさらに悪化してしまい、さらに抑え込もうと苦労しているからです。
繰り返しになりますが、行動・心理症状は、認知症の方が何かしらの不快感や不安を感じている状態です。その状況から助けてもらいたい気持ちが、行動となって出てきているのです。ですから、我々介護に携わる者は、そのSOSに対して、それを解消してあげる関わりをする必要があるのです。
ケアに関わる人たちの意識や視点を統一する
行動・心理症状に対するアプローチを行うには、職員の意識統一や視点を合わせることが重要になります。全員が、同じ認識を持って取り組まなければ、認知症ケアはうまくいきません。
正職員やパート、介護職員や看護職員など、立場や専門性はそれぞれ違っていても、同じ方向を見てケアに当たる事が必要になります。誰かできるけど、誰かはできない。納得している職員もいるが、そうでない職員もいる。
こういう状況では、うまくいきませんので、ケアチーム全員で話し合って取り組むことが求められます。
その方のニーズに合っているのかを検証し、PDCAを繰り返す
行動・心理症状に対するアプローチでは、PDCAサイクルを繰り返していくことが重要になります。具体的には以下の4つの流れになります。
①アセスメント 行動の観察・評価
②背景要因の分析 苦痛・不安の原因の検討
③背景要因に対してのケア計画の作成
④ケアの実践 実践結果の再検証
認知症ケアにおけるPDCAサイクルの構築
ここからは、より具体的に認知症ケアを実践していく方法について解説していきます。
4つの流れに沿って、ひとつひとつ解説していきますので、参考にしてみて下さい。
①アセスメント 観察と評価
先にも記載した通り、行動・心理症状は、認知症の方からのメッセージです。認知症の方の苦しみや不安が、どのような形で出現しているのかをあるツールを用いて確認していきます。
使用するツールは、「BPSD評価尺度 NPI-HH」です。
これは、認知症の方の行動・心理症状に対する国際的な評価ツールになります。12種類の症状を包括的に評価するもので、この評価ツールを使用して確認をしていきます。
その際、ひとりでは行わず、必ずケアチームで話し合い、評価を行うようにして下さい。これは、行動・心理症状に見落としがないようにするためです。
また、評価の中で意見が分かれることがあるかもしれませんが、多数決ではなく、より重い症状を評価した職員の評価を採用しましょう。これは、過小評価を防ぐためです。
②背景要因の分析
パーソンセンタードモデルなどの考え方から、その方の苦痛や不安につながる背景要因についての分析をしていきます。
✅食事摂取量に問題がないか
✅水分摂取量に問題はないか
✅皮膚状態に問題はないか(痒み、発疹など)
✅身体に痛みはないか
✅排泄状況に問題はないか
✅視力・聴力に問題がないか
✅内服薬による影響はないか
✅周囲の環境に不快感を感じていないか
✅尊厳を傷つけられるような言葉や態度をされていないか
これらの中で、該当する項目があれば、そこにニーズがかくれている可能性が高くなります。ケアチームで話し合って確認をしていきましょう。多くの場合、項目のいずれかに当てはまると思います。
その当てはまる項目について、特に対象の方にとって行動・心理症状に影響がある要因は何であるかを話し合い、決めていきます。
該当項目がない場合、その方の生活歴や価値観などから、その方を尊重したケア、パーソンセンタードケアについて実践していく必要があります。
③ケア計画の作成
背景要因の分析で導き出された、認知症の方に苦痛や不安を与える要因についてアプローチするためのケア計画を作成します。チームで話し合い、どういうアプローチができるのかを決めましょう。
その際の注意点としては、内容はなるべく分かりやすく、多くの要素を詰め込み過ぎないようにしましょう。そして、経験ある特定の職員だけができる内容ではなく、誰もが実践できる内容にすることが重要です。
例えば...
○失禁の不快感がないように、○時と○時にトイレの声かけをする
○水分を1日トータル○○ml摂取してもらう
のようにシンプルかつ分かりやすいものにすることが重要です。
④ケアの実践する
ケア計画ができたら、実践をしていきます。1~2か月程度は継続してケアを行っていきましょう。この時、誰かが手を抜いたり、ひとりだけ違うアプローチをしていては、適正に評価できません。
必ず、チーム全員が同じ意識を持って取り組むことが重要です。
一定期間実践をしたら、再度アセスメント、観察・評価を行い、改善が見られたか、変動なしあるいは悪化したかを評価します。
改善なら、継続していきましょう
変動なしあるいは悪化したであれば、背景要因から別のアプローチを検討していきます。
これを繰り返すことにより、行動・心理症状の改善を目指していくのです。
実践する意義を見出せない人へ
分析や計画、実践とやるべき過程が多く、人手不足で難しいと感じたり、面倒くさいと感じることがあるかもしれません。今のやり方で、認知症の方の行動・心理症状が改善しており、介護に負担を感じていないのであれば、そのケアを続けてもらえれば良いと思います。
しかし、この記事を読んで頂いているということは、今現在実践している認知症ケアに疑問を感じていたり、認知症の行動・心理症状に悩まされているのではないでしょうか?もし、そうであれば、今のやり方を継続していても行動・心理症状は改善せず、むしろ悪化していく可能性もあります。
それであれば、初めは負担に感じるかもしれませんが、その後のことを考えて行動してみることをおすすめしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。当ブログでは、認知症ケアに関する記事の他、介護保険情報、コミュニケーションのテクニックなどについて解説している記事もありますので、興味のある方は覗いてみて下さい。
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