ショーステイやデイサービスでの生活相談員の仕事のひとつとして、「事前訪問」があります。
ご利用者がサービスを利用開始する際に、事前にご自宅へ訪問し、ご利用者のニーズを確認したり、利用料金や契約書の説明したりする業務です。
事前訪問は、ご利用者やご家族と初めて顔を合わせる場面であり、事業所に対する印象を左右する超重要イベントです。生活相談員の言動ひとつで、事業所の第一印象が決まってしまうといっても過言ではありません。
私は15年以上、生活相談員として働いていますが、未だに「もっとこうすれば良かったかな」、「これを準備しておけば良かったかな」と感じることがあります。まだ経験が浅い頃は、とにかく無事に契約書を交わすことばかりを考えてしまい、ご家族に不快な想いをさせてしまうこともありました。
初対面の場面では、誰でも緊張します。
どうすれば良いか分かっていても、その場に行くといろいろと抜けてしまうことがあるんですよね。事前訪問について、細かく見ていけば注意点はたくさんありますが、今回は事前訪問がうまくいくポイントについて紹介していきたいと思います。
事前訪問がうまくいくためのポイントは次の4つになります。
●訪問に行く前の準備
●緊張を和らげる雑談
●リスク管理と説明
●事業所に求められるサービス内容の確認
訪問に行く前の準備
まずは、訪問に行く前の準備です。
準備することは以下の4つです。
①事前情報の確認
②契約書や重要事項説明書の確認
③法人のパンフレットや法人内事業所のサービス内容、料金などが確認できるもの
④手続きに必要な備品
事前情報の確認
当たり前ですが、担当のケアマネジャー等から頂いている事前情報には、必ず目を通しておきましょう。
家族構成・ご本人の状態・自施設を利用する理由などを確認します。
事前情報を確認しておくことで、想定される話の内容、聞かれるであろう質問、ご利用者に必要なケアの内容などを事前に予測することができます。必要であれば、現場に確認を行い、事業所でできる対応なども把握しておくと良いでしょう。
契約書や重要事項説明書の確認
契約書や重要事項説明書の確認をしておきましょう。事前訪問は、長時間にわたることがあります。
契約書等の契約者名や契約の開始日などこちらで記入できるものは、事前にしておくと契約書を取り交わすときにスムーズに進みます。また、ご希望の利用日数等に合わせた具体的な利用料を算出しておくと、さらに良いと思います。
法人のパンフレットや事業所の料金などの資料
ますは、自事業所を利用して頂くことが目的ですが、デイサービスですとその後のショートステイ、ショートステイであればいずれは長期入所を考えている場合があります。その場合に、念のため法人内の事業所のサービス内容や料金表を説明できるものがあると、重要な営業活動になります。
また、法人が展開しているサービスを知っていただくことで、話のタネにもなります。法人のためにも、各事業所の資料を準備しておくことをおすすめします。
手続きに必要な備品
自分の印鑑、朱肉、捺印マット、電卓、社会保障制度がわかる本
必要な時にさっと準備できるようにしておきましょう。「社会保障制度がわかる本」は、減免制度や生活保護の説明などをする時に便利です。ちなみ私が実際に使っている本がこちら↓です。
この本は、社会保障制度を説明する時はもちろん、請求業務など日頃の業務の時にも役に立つので、超おすすめです。
準備ができたら事前訪問へ出発です。ご利用者宅には10分前くらいに到着するように余裕を持っていきましょう。初対面の場合、いきなり訪問すると相手も緊張するため、ケアマネが到着するのを待って一緒に行くのがおすすめです。
緊張を和らげる雑談
ケアマネジャーから紹介を受けたら、いよいよ事前訪問のスタートです。初めて顔を合わせる者同士、当然緊張があります。
この状態でいきなり利用の話を始めても、うまく言葉を引き出せなかったり、会話が続かない状況になってしまいますので、アイスブレイクの意味も含めて、雑談から入りましょう。※ご家族が仕事の合間に来ているなど、状況によっては短く済ませることも必要です。
天気など直接影響のない範囲から話始めるのがベターです。その後、会話の中から共通点を見つけていきましょう。共通する話題、趣味などがあると一気に距離が縮まり、相手の表情の和らいできます。
例えば、若いころにやっていたスポーツや出身地が一緒など話の内容は何でも良いと思います。
ここから徐々に信頼関係を構築していきましょう。
私は、自分の子供の話をよくします。高齢者は、子どもがお好きな方も多いですし、ご家族も子育てを経験されている方であれば、アドバイスをくれたりして会話が盛り上がります。
楽しく話ができると、その内容が印象に残り、それ以降覚えていてくれる可能性が高くなります。
このように、最初の雑談はとても重要ですので、いきなり本題ではなく、雑談からスタートすると良いと思います。
リスク管理と説明
利用時に起こりうる転倒や転落、急変などのリスクについて把握をします。
歩行状態やご自宅での過ごし方、持病などから推測されるリスクについてご家族に説明を行い、理解して頂く必要があるからです。なるべく転倒などの事故は避けたいと思いますが、施設をご利用いただく上で100%安全と言うことは言えないんですね。
そのため、リスクに対してこちらができる対応についてもきちんと説明しておく必要があります。
時々、「絶対に転ばせないでください」という無理難題を言ってくるご家族もいますが、その場合は「無理です。」って説明しています。
リスク管理と説明がきちんと行われていないと、何かが起きた時に苦情になる可能性が高くなります。施設としてできる対応はきちんと説明しておきましょう。
事業所に求められるサービス内容の確認
事前にケアマネジャーからケアプラン(計画)に基づいて、提供するサービスについて説明をされると思いますが、ご利用者やご家族からもきちんとお話を聴いておく事が重要です。
例えばショートステイを利用する場合、ご家族はレスパイト目的で定期的に利用したいと思っている中、いざ利用した時に、プランに入浴があるからといって、無理やり入浴させたため、「もう行きたくない」とご利用者が拒否的になってしまっては意味がありませんよね。
サービスを利用する本質を確認できていれば、定期的なご利用が目的の場合、ご本人に気持ちよく過ごしていただく事が求められることになります。ケアプランの内容と合わせてご本人やご家族のお話もきちんとお聞きし、提供するサービスについてすり合わせをしましょう。
まとめ
事前訪問は、ご利用者やご家族が安心してサービスを利用して頂くための最初のステップです。また、生活相談員は最初に接する立場として、きちんとした対応が求められます。
今回の記事の内容を参考に、気持ちよくご利用いただけるように努めていきたいですね。