特別養護老人ホームの入所を急いでいる方は多いのではないでしょうか?今回は、特養の入所要件や料金、早期入所のためのポイントについて解説していきます。
まず...ぶっちゃけて言うと、
・公正な評価で入所の順番が全て決まっているわけではありません
これは残念ながら事実です。緊急性や逼迫性があっても、必ず優先的に入所できるわけではないんです。施設側も困難ケースや入所後に課題がありそうなケースは、できれば入所してほしくありません。この現状を踏まえて、解説していきます。
特別養護老人ホームとは
特別養護老人ホームは、地方自治体や社会福祉法人の運営による、公的な老人ホームです。老人福祉法上では特別養護老人ホーム、また介護保険法では、介護老人福祉施設と呼ばれています。
原則として、「要介護3以上」の方が入居できる介護施設であり、24時間にわたって、介護サービスを受けられます。比較的費用が安く利用できるところも特徴のひとつです。
特別養護老人ホームの特徴
特別養護老人ホームの入所要件
要介護1また2でも入所できる特例入所の要件とは
要介護1又は2の者であって、特例入所が必要なやむを得ない事情に該当する者については、次のアに該当し、かつ、イ若しくはウに該当する者又はエに該当する者とする。
ア 単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により、家族等による支援が期待できず、かつ、地域で介護サービスや生活支援の供給が十分でないと認められることにより、在宅生活が困難な状態である場合
イ 認知症であることにより、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られる場合
ウ 知的障がい・精神障がい等であることにより、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られる場合
エ 家族等による深刻な虐待が疑われる等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態である場合
要件イ 認知症であることについて
特例入所の要件イの「認知症であること」については、「認知症高齢者の日常生活自立度」(以下「日常生活自立度」という。)の判定におけるⅢ以上に該当する者とする。
なお、日常生活自立度の判定については、原則として、直近の要介護認定の認定調査において判定された日常生活自立度によるものとする。
ただし、調査以降に心身状態が急変するなどにより、これにより判定することが適当でない場合については、主治医による診断書、意見書等による日常生活自立度により判定することができるものとする。
要件エ 心身の安全・安心の確保が困難な状態について
高齢者虐待緊急度判定会議において、生命の危険があり、緊急的な入所の必要性があると判断された場合。
特別養護老人ホームの費用・利用料について
特別養護老人ホームは、民間の有料老人ホームと違って入所一時金などはかかりません。利用によって発生する介護サービス費の他に、居室費及び食費その他日用品等が実費でかかってきます。
多床室 ⇒ 従来型個室 ⇒ ユニット型個室
の順で費用が高くなっていきます。
居室形態ごとの1か月あたりの利用料については、下記に例を示しますので参考にして下さい↓
※なお、介護サービス費については事業所ごとに算定している加算等が異なるため、詳細については、申し込みをされる事業所に確認して下さい。
多床室(4人部屋、2人部屋など)
※従来型個室の場合、居住費が1日当たり1,171円になります
ユニット型個室
入所の順位が決まる入所判定とは
入所を希望している施設に、入所申込書と介護支援専門員意見書を提出すると、入所申込者評価基準に沿って、点数化されます。これは、要介護度や認知症、主介護者の就労や疾病等によって決まります。この点数が高ければ高いほど、入所順位としては高い順位になります。
この結果を基に、入所検討委員会が開かれ、入所者を決定していきます。
入所が決まるいろいろな事情
前述で記載した通り、入所順位は入所申込者評価基準で高得点になった人から、入所の優先順位として高くなり、早く入所できることになります。しかし、高得点でもすぐに入所につながらない人もいれば、得点が低くても入所になる人もいます。
入所になりにくい人
急性期で治療が必要な人
特別養護老人ホームは、生活の場として捉えられており、治療の場ではありませんので、急性期の方は入所の対象とはなりません。治療等を行い、病状が安定してから入所が可能か判断されます。
医療行為が必要な人
特別養護老人ホームには、医師が配置されている事業所もありますが、嘱託医として依頼している事業所がほとんどです。配置されている看護師も嘱託医等の指示で必要な医療行為を行いますが、人手不足から手間の多い行為はしたくないというのが実際です。
医師の指示で看護師が行える主な医療
〇インシュリン注射 〇褥瘡の処置 〇経管栄養 〇在宅酸素 〇痰の吸引 など
また、特別養護老人ホームは、基本的に夜間帯に看護師が配置されていません。その間に何かあれば、看護師が駆け付けなければならないのが現状です。
喀痰吸引等一部の行為については、制度改正により研修を受けた介護職員も実施できるようになりましたが、研修時間が膨大でありかつ実地研修も行わなければならず、研修を受けた職員が十分に配置されていない事業所もまだまだあります。
医療行為は、一歩間違えば命に関わるケースもあり、施設としてはリスクをなるべく避けた対応になってしまいます。そういった意味で、医療的な処置が必要な入所希望者は敬遠されがちになってしまいます。
家族や身元引受人等が非協力的
特別養護老人ホームは、終の棲家としての役割を担い、看取り介護を実施している事業所が多くあります。入所後もご本人が心安らかに最期を迎えられるように、ご家族等の協力を得ながら、介護を提供させて頂きます。
「全部任せます」「入所したんであとはよろしく」的な考え方のご家族では、今後受診が必要になった場合や看取りになった場合、その他協力が必要になった場合に施設として不安が残りますので、同じ判定基準の点数であれば、協力的なご家族の方が入所対象となります。施設側が、入所後に少しでも不安を覚えるようなご家族では、やはり敬遠されてしまいますので注意が必要です。
その他に連絡がつきにくいご家族なども施設側は嫌がりますので、身元引受人でなくても複数人連絡先を提示できるようにしておくと良いと思います。
入所になりやすい人
状態が安定している人
入所者は高齢で、何かしら疾患を抱えている方がほとんどだと思いますが、状態が安定している人は入所に繋がりやすいです。退所が出て、空きが出た場合に相談員は次の入所者を決めなければなりません。この業務が、手間がかかり、次期入所が決まるまで1か月かかる場合もあります。ですので、入所したら、問題なく長期間ご利用いただけそうな状態の方は、早めの入所につながりやすいです。
申し込み時の印象が良い
入所申込のために来所されたご家族等の言葉や行動を相談員は細かく見ています。横柄な態度や高圧的な態度、非協力的な態度のご家族が申し込みに来られると、入所後に不安が残りますから、入所判定の段階で、なかなか選定しにくくなります。
様々な事情で切羽詰まっている状況でも、落ち着いて状況をお話して下さり、入所後も協力してくれそうな様子が見られれば好印象です。最終的に人が相手の仕事ですので、感情や印象に左右されるのは当然かもしれませんね。
ちなみに、入所申込書を送付するだけの方もいますが、ご家族がどのような方なのかを知っているのと知らないとでは、入所判定での印象がだいぶ違いますので、できれば来所して申し込むか送付でも電話連絡はしておいた方が良いと思います。
その他
最後にお話ししますと、ぶっちゃけコネもあります。
理事長や嘱託医などの一声で入所順位がひっくり返ることはあります。これは、一相談員だけではどうにもできません。しかし、なるべく厳正で公正な判定にて入所して頂きたいと考えておりますので、お伝えしておきます。
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