生活相談員の勉強部屋

【要確認】社会保障の現状と介護人材不足への対応 辞めない職場づくりが必要

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 こんにちは、ほしくずです。

 今回は、そう遠くない未来に訪れる介護保険制度を含む社会保障の問題と全業態に共通する人材不足に関する内容です。

 少し難しい話になりますが、施設を運営していく上で、人材の確保に関する課題は、今後ますます大きくなっていきます。現状を把握し、改革を行うために動き出すのであれば、このタイミングしかありません。

 今回は、社会保障の現状と人材不足への対応に関して確認をしていきたいと思います。

社会保障に関する課題を考える際の前提

 日本の人口バランスの変化、2040年までの人口構造の変化では、団塊の世代が全員75歳以上になる2025年に向けて高齢者人口は急速に増加した後、その後は緩やかに増加していくが、一方ですでに減少に転じている生産年齢人口は、2025年以降さらに減少が加速します(2040年までに生産年齢人口が急減する▲16.6%)。

 社会保障における受益(給付)と財政の関係では、すでに公費負担への依存度が著しく増加し、本来税財源で賄われるべき公費の財源について特例公債を通じて将来世代への負担が先送りされており、負担増を伴わないままに受益(給付)が先行する形になっています。

 現在の物価高や円安が日本経済を圧迫していますが、実際はもっと深刻な状況にあるということです。必要であるはずの負担をしていないわけですから。

 新型コロナウイルス感染対策による歳出が大幅に増額され、国の財政を圧迫しているという事実もあります。

働く人の絶対数が減る(労働力の希少化&財源の確保難)

 全ての業態において、働き手の価値が上がり、より人手確保のハードルが上がっていくことが予想されます。スキルや知識、経験を持っている優秀な職員は優遇され、事業所間での取り合いになります。

 魅力ない事業所では、優秀な人材は引き抜かれていき、自己研鑽もせず何も考えない職員が残っていくことになりますので、さらに働きにくい環境となります。職員だけの問題ならまだしも、そこに入所しているご利用者にとっては質の低いサービスにより、人生の最期を納得した形で迎えることが難しくなってしまいます。

介護保険制度自体の維持も困難な状況になってくる可能性もあります。

公的なサービスが縮小(狭く・浅く)

 社会保障費にあてる財源不足により、公的なサービスを受けることが難しくなってくることが予想されます。

 介護保険制度で言えば、2024年の介護報酬改定においては、財務省が積極的に費用の削減をしようと様々な理由をつけて制度を変えていこうとしています。

 例えば軽度要介護者(要介護1,2)の方の通所介護・訪問介護の総合事業への移行などです。

介護人材を巡る現状と見通し

 医療・福祉分野の就業者数は、約20年間で410万人増加し、約8人に1人が医療・福祉分野で就業しています。

 2040年には医療・福祉分野の就業者数が96万人不足する見込みです。

 介護職員の離職理由には、収入面やライフイベントのほか、理想と現実とのギャップが考えられます。職場の人間関係、ライフイベント、職場の理念や運営の在り方、他に良い仕事・職場があったという上位4位までの理由については、職場づくりで解決できることだと考えられます。

 そこへのアクションが必要であるということです。

介護人材確保の動向

 厚労省では、加算等による処遇改善により、賃金アップにより介護職員の待遇を改善して、人手不足を解消しようとしています。

 しかし、これだけでは問題は解決しません

 介護人材は不足している理由は、制度そのもの構造に問題があるからです。

構造上の問題

サービス量の増加に資源が追い付かない

賃金が需要と供給に無関係

制度の複雑化による余剰人員の必要性

国民の理解が得られていない

 もう少し詳しく確認していきましょう。

サービス量の増加に資源が追い付かない

 介護人材は確実に増えてきましたが、高齢化に伴い、介護が必要な人が増加し、サービス量(提供主体)が増加し、追いついていかないのが現状です。さらに、業界内で人材の取り合いが常態化し、人口動態により労働力が希少化しているという問題もあります。

賃金が需要と供給に無関係

 給料が安いのは、介護報酬がこれとは無関係のところで決められています。よって、構造上解消できないのは当たり前のことです。本来需要に対して供給が追い付かなければ、その価値は上がっていくはずですが、介護保険の制度上そのバランスは関係ないのです。

 この業界に勤めている以上、資格を取得したり、スキルや知識を向上させ、自分の価値を上げていかなくてはなりません。職場内のみならず、業界内で自分の価値を証明できる武器が必要になります。

制度の複雑化による余剰人員の必要性

 介護報酬上の配置基準3:1と、実際の運用が一致していないという現状があります。実際には、介護職だけで基準を満たしているのが現実です。制度が複雑化し、それに対応するためにより人手が必要な状況になっています。

 介護が介護のプロフェッショナルとして、その役割を存分に発揮できるように、介護が担うべき業務とそれ以外の業務で分けて考えていく必要があると思います。

国民の理解が得られていない

 介護報酬の財源を増やすためには、国民の負担(保険料、税金)を増やす必要があります。しかし、それをやるとなると、政治を動かさなければならなくなりますが、増税を主張していては選挙に勝つことができません。今の枠組みの中では、今後は縮小に向かうしかありません。

 「金は出さないけど、困ったら助けてね。」はもう無理な時代に突入します。

 「高福祉」を望むのであれば「高負担」は必須です。

介護人材不足解消」するためには?

 私たちの職場が、職業選択の上位グループに入らなければなりません。これは、国や行政が何か手立てを考えてくれるのではなく、自分たちが行動していかなければならないことです。

 事業者がそれぞれできることをやり尽くして、「優れた職場」になる(競争力を獲得する)しかないのです。

これからの介護事業者がとるべき介護人材戦略

1,選ばれない職場にならないこと

2,優れた介護の職場になること

3,他のどの産業にも負けない、魅力ある職場になること

 そのためには、どう行動していかなくてはならないのでしょうか?

 経営基盤の安定化+運営体制の強化により、10年後を職員(及び求職者)に見せられることが大切です。

 人材確保も大事であるが、人材定着を軸に施設づくりをすることが優先課題となります。その仕組みがしっかりしたものとなれば、それは必ず人材確保にもつながっていくはずです。

 自身が勤めている事業所・法人の強みは何でしょうか?他にはない価値はありますか?

外国人介護人材の受け入れは?

 外国人介護人材の受入の仕組みは、他産業に比べて国の制度が手厚い印象であり、むしろ積極的な側面があります。

 介護分野で外国人介護人材を受入できるようになって10数年、その人材活用のノウハウが蓄積されつつありますが、日本の世界的な競争力が低下し、英語圏に流れており、日本自体が来たい国ではなくなっています。

 これからも外国人材が増え、受け入れれば人材不足は解消するという考えは、かなり時代にミスマッチになりつつあります。アジアの国々から見た日本の魅力は、体が小さいこと、治安がいいということぐらいです。

 外国人介護人材の受け入れは、いまが最後のチャンスと思われるが、ただ人手が本当に足りなくなってからの受け入れは逆効果になってしまいます。現場に入って、慣れるまでは当然のこと、その後も他のサポートが必要であり、外国人材に寄り添う余裕が現場になければ、今いるスタッフも外国人介護人材も不幸なる可能性が高いです。

 準備やノウハウ、余裕がある事業所でなければ難しいでしょう。

最後に

 福祉業界だから、社会福祉法人だからといって、いつまでも守られていると思っていては手遅れになります。

 ご利用者に満足いただけるサービスの提供、優秀な介護人材の確保には、施設や事業所が地域において魅力的な組織であることが必要になってきます。

 制度としても環境としても行き詰まり感がある介護業界ですが、今後も厳しい状況が続く中で、それに耐えうる組織づくりができるかどうかが重要です。

 他産業に比べてアドバンテージの多い分野であるから、「いまのうち」に変革を恐れない組織づくりができるかどうか。そういう意識は、忘れないでいたいと思います。

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