こんにちは、ほしくずのクズきちです。
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今日、お届けする内容
認知症の方の行動についての考え方について
認知症の方の行動で内服薬を使用する場合の注意点
認知症の方の問題行動という捉え方の誤解
認知症の方の行動を「問題行動」として捉える考え方が未だに根強く残っています。この考え方である限り、その方の行動を抑えようとする介護や抑える手段として薬を使うといった関わり方にばかり囚われ、本来の認知症ケアのあり方が見過ごされてしまいます。
認知症の方の問題行動として上げられる主な内容は次のようなことです。
問題行動とされる行為
○介護拒否
○暴言・暴力
○徘徊
○大きな声で叫ぶ
などです。
認知症の方を介護する家族や施設の職員のケアの負担を大きくするこれらの行為は、「問題行動」や「異常行動」として考えられていました。
現在それらは、「中核症状」に伴う不安や不快感が引き起こす「行動・心理症状(BPSD)」と言われています。
この「行動心理症状(BPSD)」には、個人差があり、その症状に一番困っているのは、認知症の方ご本人です。しかし、介護するご家族や介護職員も同じようにその症状に困難な状態に陥ることがあります。
特に認知症の方からの攻撃的な言動は、他人を傷つけてしまったり、ご本人もけがをされたり、人間関係を悪くしたりしてしまい、結果的に良いケアを受けられなくなったりします。また夜間不眠で大声や奇声を上げられるとぐっすりと休むことができなくなってしまいます。
行動・心理症状が起こる要因とは何か?
「行動・心理症状(BPSD)」は、中核症状に伴う不安感や不快感、周囲の環境などによって引き起こされます。私たち介護に携わる職員もこの環境の一部に含まれます。
チェック
関わる介護職員によって、認知症の方の反応が変わるという経験をしたことはありませんか?
認知症であってもひとりの人間です。自分が嫌な気持ちになる職員が近づけば不安になりますし、安心できる職員が話しかければ笑顔で応えてくれます。
認知症の方の「行動・心理症状(BPSD)」に対する理解がない現場では、その方は常に不安と恐怖の中で生活していることになるのです。
ここで、具体的な要因となるものをいくつか紹介していきます。
行動・心理症状の要因となるもの
○便秘...排せつの不快感は、不眠や歩き回る行動につながりやすいと言われています。排便状況やタイミングなどを確認していく必要があります。
○脱水...水分摂取量が少ないと、微熱や食欲不振などにつながります。気が付かずに放置していると、夜間せん妄の原因にもなります。
○発熱...発熱を中心とした体調不良が要因となる場合があります。その不快感を訴える術がなく、行動として表れることを知っておくべきです。
○副作用...内服薬による副作用の可能性を考慮しましょう。行動を抑えようとして処方された薬が、かえってその行動を誘発してしまう場合もあります。
○不適切な対応...認知症の方が、不安や不快感を感じて行動している状況を抑え込もうとしたり、人格を否定するような声かけや対応は、行動・心理症状(BPSD)を悪化させる可能性があります。
行動・心理症状(BPSD)を引き起こす要因は、日常生活の中にあります。私たち介護を提供する側が、その行動の意味を理解し、理由を知ることで、認知症の方が気持ちよく生活できる場を作り上げることができるはずです。
出現している行動・心理症状(BPSD)に対して、その要因についてアプローチをかけていくことで、その症状が改善される可能性があることを理解しておきましょう。具体的な手順については、下記記事にて紹介していますので、確認してみて下さい。
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認知症の方に内服薬が使用される場合
認知症の方がその症状に苦しみ、いつまでも興奮していたり、お怪我をしてしまう可能性が高い場合などは、内服薬を使用することで「落ち着いた生活ができる」「生活にゆとりができる」といった状態につなげられる可能性があります。
毎日よく眠れなかったり、興奮した状態がいつまでも続いていては、さらなる行動・心理症状につながってしまうため、なかなか症状が落ち着かない場合は、内服薬を使用することも必要です。
しかし、一方で内服薬の効果や副作用を十分理解していないと、それが要因となって行動・心理症状が悪化してしまうことがあるということも理解しておく必要があります。
認知症の方に使用される内服薬と効果
認知症の方に使用されるのは、主に向精神薬と言われるものです。その中で、よく使用されているものについて下記の表にまとめますので、確認してみて下さい。
内服の種類 | 内服薬の効果 |
抗精神病薬(リスペリドン、リスパダールなど) | 統合失調症や躁状態などの治療に使用されるもので、幻覚や妄想を軽減させる効果があります。 |
抗不安薬(デパス、ランドセンなど) | 不安症状の改善のために使用されるもので、不安で落ち着かない、イライラ状態を落ち着かせる効果があります。 |
抗うつ薬(パキシル、レクサプロなど) | 元気がない、やる気がおきないなど、うつ状態の改善のために使用されます。 |
睡眠薬(マイスリー、アモバンなど) | 不眠の改善、眠ることを助ける効果があります。 |
抗てんかん薬(デパケンなど) | てんかん症状を抑えるだけでなく、気分を安定させる効果があります。 |
暴言・暴力などの症状には抗精神病薬や抗てんかん薬が使われことが多く、抑うつ、意欲低下には抗うつ薬が使用されます。寝つきが悪い、早朝に目がさめてしまうなど十分に睡眠がとれない時は睡眠薬が使用されます。
認知症の方に使用される内服薬の副作用
認知症の方の苦しみや不安を軽減するために使用される向精神薬ですが、その効果の反面には多くの副作用があります。主な副作用について下記の表にまとめておきます。
内服の種類 | 内服薬の副作用 |
抗精神病薬(リスペリドン、リスパダールなど) | 眠気 ふらつき 歩きにくさ じっと座っていられない 便秘 など |
抗不安薬(デパス、ランドセンなど) | 眠気 ふらつき 脱力感 食欲不振 便秘 依存性 など |
抗うつ薬(パキシル、レクサプロなど) | 吐き気 立ちくらみ 口がかわく 便秘 イライラ感 など |
睡眠薬(マイスリー、アモバンなど) | ふらつき もの忘れ |
抗てんかん薬(デパケンなど) | 眠気 ふらつき 脱力感 食欲不振 便秘 など |
副作用が不快感や不安の原因となり、行動・心理症状を引き起こす場合がありますので、安易に薬に頼るのではなく、その原因について検証することが重要です。
副作用がもたらすリスク
副作用には、行動・心理症状を悪化させてしまう可能性とともに、様々なリスクが伴う可能性があることも理解しておくことが重要です。
副作用 | 考えられるリスク |
眠気、ふらつき、立ちくらみ | 急に立ち上がったり、体を動かしたりする際に転倒・転落しやすくなります。 |
食欲不振、便秘 | 食事量低下による低栄養、便秘による不快感が行動・心理症状につながる可能性があります。 |
誤嚥 | うまく食事をのみ込むことができないと誤嚥につながりやすく、肺炎のリスクが高くなります。 |
歩行困難 | 歩き出しが困難で小股になり、前のめり姿勢になります。体のバランスがとりにくくなるので、転倒しやすくなります。 |
副作用は、実際の効果よりも早く出現することもあります。
認知症の方に薬を使用する場合の注意点
ここまでお話してきたとおり、認知症の方の行動・心理症状に対して薬を使用することは、症状が改善する効果がある一方で、その副作用についても慎重に検討しなければなりません。
向精神薬を使用する場合の注意点
①ご本人に薬を服用することを説明すること
②体調の経過を観察すること
③症状の経過を見ながら、薬の調整を行うこと
④「行動・心理症状が出現=内服薬を使用」ではなく、その原因を検討すること
認知症の歴史の中で、長い間行動・心理症状(BPSD)は問題行動と言われてきました。現在では、その行動に意味があり、その要因を考えて関わることによって、その症状が改善する可能性があることが理解されるようになってきています。
BPSDには非薬物療法が第一に選ばれますが、どんなにその人を理解しようとしたとしても、すぐにはどうすることもできずに向精神薬を服用していただく認知症の人がいることも事実です。
認知症の方に寄り添い、お話を聞いたり、手を握るなどの関わりが、その方の安心感につながり、内服薬の効果と相まって、ご本人も介護を提供する側も安心して生活できる環境をつくっていけるのです。