今回は、看取り介護(ターミナルケア)についての研修です。
令和3年度の介護報酬改定により、『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』に沿って、ご本人とって最善の選択が行えるように支援していく方針が示されました。
この内容と新たに算定可能となった看取り介護加算の要件を踏まえて解説していきたいと思います。
看取りケアに関する研修動画
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看取り介護とは何か?
看取り介護とは、人が自然に亡くなっていくまで、ご本人の意思や家族の意向を大切にしながら必要なケアを行い、その人生の最期までを見守る過程のことです。
「死期」が近づくことにより生じる様々な苦痛を緩和し、最期の日まで寄り添います。
看取りの時期とは?
介護保険制度における看取り期とは、以下のような状態のことを指します。
医師が、医学的に回復が見込めないと判断したときに、概ね余命が6か月程度であって、老衰または病気の末期であり、あらゆる治療も病気の治癒に対して効果がない状態のことを言います。
また、日本老年医学会における高齢者の終末期とは、以下のような状態のことを指します。
病状が不可逆的かつ進行性で、その時代に可能な限りの治療によっても病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり、近い将来の死が不可避となった状態です。
つまり、その方の病状や老衰に対して、医療的に様々な手段を尽くしても改善する見込みがなく、人として自然に亡くなっていく時期のことを言います。
令和3年度介護報酬改定における看取り介護に関する事項について
令和3年度の介護報酬改定における看取り介護加算に関する事項や算定要件等について確認していきます。
今回のポイントとしては...
よりご本人やご家族の意思を尊重した看取り介護を行うことに重点が置かれたところにあります。
現在、特別養護老人ホームでは、看取り介護が当たり前に行われていると思います。令和3年度の介護報酬改定では、看取り介護の質を向上するべく、ただ看取りを行うのではなく、ご本人や家族にとって満足できる、安心した最期を迎えられるような看取り介護が実施されることを求めています。
そこで今回の改正で 『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』 が取り上げられたわけです。
看取り介護加算の新たな算定加算について
現行の死亡日以前30日前からの算定に加え、それ以前の一定期間の対応について、新たに評価する区分を設けられました。
特別養護老人ホームにおける中重度者や看取りへの対応の充実を図る観点から、看取り介護加算の算定要件の見直しが行われています。
人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインについて
ここで、先ほど紹介した『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』について、ポイントをまとめていきたいと思います。
厚生労働省のホームページによると、平成19年にとりまとめた「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は、平成18年3月に富山県射水市における人工呼吸器取り外し事件が報道されたことを契機として、策定されたものです。
人生の最終段階における医療の在り方について、次のように示されています。
○医師等の医療従事者から適切な情報提供と説明がなされ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行った上で、患者本人による決定を基本とすること
○人生の最終段階における医療及びケアの方針を決定する際には、医師の独断ではなく、医療・ケアチームによって慎重に判断すること
看取り期の医療・ケアの方針決定について
看取り介護の方針については、施設のみで決定していくのではなく、そこにご本人の意思や意向、家族の思いなども含めて検討していく必要があります。
ここでは、『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』を参考にしながら ポイントをまとめていきます。
ご本人の意思が確認できる場合
①医療従事者から適切な情報提供と説明がなされた上で、十分な話し合いを踏まえた本人による意思決定を基本と すること。
②本人の心身の状態や医学的評価の変更等に応じて、本人の意思が変化する場合もあることを理解すること。
③本人が自ら意思を伝えられない状態になる可能性も考慮し、家族等も含めた話し合いが行われることが必要とされています。
ご本人の意思が確認できない場合
①医療・ケアチームによる慎重な判断が求められます。
②家族等が、本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、本人にとって最善の方針をとることを基本とされています。
③家族等が、本人の意思を推定できない場合には、本人にとって何が最善であるか、家族等と十分に話し合い、本人にとって最善の方針をとることを基本とします。
看取り介護のプロセスをきちんと記録する
ケアの方針決定に関するプロセスについては、その話し合った内容を文書にまとめ、記録しておくことが求められます。
これは、本人の意思、家族等の意向、各職種などの意見を踏まえ、どのような経過でその方針となったのかが分かるようにするためと会議に参加していない職員も、看取りのプロセスを把握しておく必要があります。
ご本人、家族、そして職員が共通の認識を持っておくことが重要になります。
看取り期における支援のポイント
ご本人や家族の意思や意向をきちんと把握することの重要性を解説してきましたが、もう少し詳しく支援のポイントについてまとめていきたいと思います。
ご本人の意思やご家族の想いを支援
○意向に沿える沿えないに関わらず、まずはその想いを受け入れる
○意向について対応できるかきちんと検討する
○検討した結果をきちんとご本人やご家族へ説明し理解を得る
○検討した過程を記録に残す
事業所の対応や都合を押しつけないように配慮する
施設の業務都合で、「看取り期」になったからといって、すぐに極端な対応へ変更する必要はありません。ご本人の意思や状態、ご家族の気持ちなどを汲みとった関わりが必要です。
例)外へ出る事が好きだったご利用者。看取りになったから、ベッドから起こさなくていいのか?
⇒体調が良い日など、離床して外へ出てみる事を検討する。離床できる体調の目安などが示されていれば、安心して対応できる。
例)いつも美味しそうに食事をしていた方が、看取りになった日から食事提供をストップされる。
⇒負担のない食事の内容やできる工夫がないか検討する。
看取り期における職員の姿勢
〇検討したり、工夫した結果として対応ができなかったとしても、ご本人の意思や家族想いに応えようとする姿勢が大切です。
〇検討した内容を記録しておくことで、自分たちがその方の看取りに真摯に向き合ってきた証明となります。
〇ご本人、ご家族、職員、皆がここで最期を迎えられて良かったと思えるような看取りを考えていく事につながります。
まとめ
看取り介護が、当たり前に行われるようになった現在、さらに質の高い看取り介護が行われるように、新たな加算の創設や 『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』 に沿ったケアの提供が求められるようになりました。
看取り介護は、その方の人生の最期に関わらせて頂く大切な過程です。
職員ひとりひとりが、きちんと内容を理解し、取り組んでいくことが必要になります。
当ブログでは、看取り介護に必要な死生観についての研修内容も紹介していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
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