こんにちは、社会福祉士のほしくずです。
2024年度の介護報酬改定まであと1年半となりました。今回の介護報酬改定に関する骨子などについては、今年度中に取りまとめられる予定となっているようです。
ここまでの介護報酬改定に関する情報をチェックしていくと、主に社会保障費や利用者負担に関する話題がほとんどになっています。
今回は、その中で財務省が積極的に進めようとするヤバイ5つの要求についてまとめていきたいと思います。
今後は、財源の圧迫を改善しようとする財務省の動きと可能な限り現場やサービス利用者の声を反映しようとする厚生労働省のせめぎ合いになってくることが予想されます。
財務省の提言
①要介護1,2を総合事業へ
②利用者負担を2割負担へ
③ケアプランの有料化
④福祉用具貸与のみのケアプラン費用カット
⑤小規模法人の大規模化
厚生労働省の働きかけに期待しつつも、財務省の提言に対する対策を同時にしていかなければなりません。
この記事では、財務省の提言についてきちんと把握することを目的としています。施設の管理者の方や生活相談員の方は、ぜひチェックしてみてください。
財務省の動きと5つの提言
2024年の介護報酬改定は、団塊世代が後期高齢者となり、2042年頃にかけて続いていく高齢者の急増と現役世代の減少、多死社会に向けた対応、介護保険制度の存続に向けた重要な改正になる見込みです。
財務省は、財政の健全化・介護保険制度の存続を目的に、「財政制度等審議会・財政制度分科会」にて議論を重ねています。
介護報酬改定における財務省の提言について、整理しておくことが大切です。
1,要介護1,2を総合事業へ
経度要介護者の介護給付費カットを目的に、要介護1,2の方の「訪問介護」「通所介護」について、総合事業への移行が検討されています。財源の縮小による地域包括支援事業所や訪問介護事業所、通所介護事業所へのダメージは大きくなるものと思われます。
総合事業とは
地域の実情に合わせて、独自にサービスの運営基準や報酬を定めることができるもの。
例)安価な有償ボランティアを活用した人員基準の緩和などで、サービス単価の引き下げなどが可能
財務省は、要介護1,2を「軽度者」と定義。
「訪問介護の生活援助をはじめ、多様な人材、資源を活用したサービスの提供を可能とすることが効率的」
財政制度等審議会・財政制度分科会より
としています。
財源にしか目が向いていない財務省らしい提言です。サービスの質や地域のニーズに合わせたサービス内容・量については、各市町村に丸投げ状態で、簡単に言うと...
ボランティアや地域共生については、自分たちで工夫しながら給付費を抑えろよ
ということですね。
2,利用者負担を2割へ
介護サービスを利用した方の負担割合を2割へするという内容です。また、現在3割負担となっている方の基準の見直しも検討されています。
現在の制度では、サービス利用者の所得に応じて1~3割となっています。現在、介護保険サービスを利用されている方の約90%の方が1割負担となっています。
もしこれが、原則2割負担となると...
2割負担の弊害
・ご利用者自身やその家族の生活が苦しくなる
・サービスの利用控えが起こる
施設に入所されている方であれば、介護給付の自己負担額が単純に倍になるということです。年間で見れば数十万円の負担増となります。私が勤務している従来型の特別養護老人ホームに入所されてい方でも、すでに経済的にかなり厳しい方たちが多くいらっしゃいます。
私たちが高齢者になる頃には、施設に入居すること自体が難しくなるかもしれませんね。
2,3割負担の対象者を財務省が提言
7日、財政健全化の方策を話し合う審議会(財政制度等審議会・財政制度分科会)を開催し、介護保険の利用者負担について具体的な提言がされたようです。
「早急に結論を得るべく検討を」と要請し、右肩上がりの介護費を抑制し、制度の持続可能性を高めていく動きを明確に示してきた形です。
2,3割対象者の想定
2割:「年金収入+その他の合計所得金額」が、単身世帯なら280万円以上、複数世帯なら計346万円以上のケース
3割:「年金収入+その他の合計所得金額」が、単身世帯なら340万円以上、複数世帯なら計463万円以上のケース など
財務省は、いよいよ本気になってきたようです。
3,ケアプランの有料化
現在、ケアマネジャーがケアプランを作成することに対する報酬は、全額公費で賄われています。
その中で、財務省は次のような見解を示しています。
「サービス利用が定着し、他のサービスで利用者負担があることも踏まえれば、利用者負担を導入することは当然」
財政制度等審議会・財政制度分科会より
現場からすれば、負担の導入により、ご利用者や家族などからの意向をできるだけ反映してほしいという圧力が強まることが懸念されます。
「お金払ってるんだから、言うこと聞いてよ!」ってことです。
これにより、逆にサービス量が増加することも考えられます。
ケアマネが、専門職としての提案することより、家族の言うことを優先してしまう可能性がでてくることは、非常に恐ろしいことですね。
これについては、日本介護支援専門員協会が厚生労働省へ10割給付の維持に関する要望書を提出しています。
「居宅介護支援費、介護予防支援費における現行給付の維持継続について」(要望)
ケアプラン有料化を改めて提言
財務省は、11月7日に行われた審議会(財政制度等審議会・財政制度分科会)で次のように提言しています。
利用者が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとすれば、ケアマネジメントの意義を認識するとともに、サービスのチェックと質の向上にも資する
(財政制度等審議会・財政制度分科会)
財務省のスタンスは、基本的に変わらない状況です。居宅介護支援に係る介護給付費は、年間約5,100億円程度です。これについて、例えば1割負担を利用者に対して請求することになれば、約500億円の削減になる見込みです。
ケアプラン有料化については、2024年は実施を見送る可能性も指摘されていますが、果たして...
4,福祉用具貸与のみのケアプラン費用カット
ケアプランに記載されるのは、介護サービスの利用に関する内容の他に、インフォーマルサービスなどの内容も含まれていることもあり、モニタリング以外の場面においても、細かな調整をしながら行っています。
しかし、そんなことも分からない机上の空論軍団の財務省は、次のように話します。
「福祉用具貸与のみのケースは、他と比べて労力が少ない」
財政制度等審議会・財政制度分科会より
「何言っちゃってるの?」って感じですよね。実際、現場に出てきて経験してもらった方が良いと思います。
5,小規模法人の大規模法人化
小規模法人が、他の事業所や法人との連携をなしに競争することだけでは、介護の質の向上にも限界があること、そして近年の新型コロナウイルスへの対応も、小規模な法人では十分に行えないという考えのもとの提言です。
「競争が、質の向上につながっていない。効率化も不十分」
財政制度等審議会・財政制度分科会より
とのことです。
小規模法人だから質が低い、大規模法人だから効率的であるというのは、どちらの法人にも勤務したことがある私からすれば、必ずしもそう言えるとは限りません。
情報収集と対策・準備は早めに
今回お話した内容は、あくまで現段階での財務省からの要求です。これから社会保障審議会などを通じて、介護報酬改定に関する議論は本格化してきます。
随時、情報収集していく必要がありますし、「そうならないだろう」などという楽観的な視点ではなく、そうなった場合の事業所や法人の対策についても準備を進めておく必要があると思います。
こちらのブログでも、新たな情報が発信されたら随時更新していきたいと考えていますので、ぜひチェックしてみてください。