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【課題あり】科学的介護推進とICT化・LIFE運用に追従できない介護現場

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 令和3年度を迎え、介護報酬改定に伴う各事業所の動きが慌ただしくなっている。今回の報酬の目玉は何と言っても科学的介護の推進厚生労働省の介護情報データシステム「LIFE」の運用開始である。この新たな取り組みを進めていくために、各事業所で準備を行っている段階だろう。しかし、今回の改正により介護現場のICT化が一気に進み、それに追従できないという課題も見えてきている。その課題と今後の取り組みについて言及していきたい。

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科学的介護推進の陰にある課題

 今回の介護報酬改定で、国は介護のあり方について大きく舵を切ったと思います。確かに今までの介護現場では、ケアプランを元にその方にとって必要なケアを検討し実践してきました。しかし、その多くが経験や感覚に依存したケアであった事もありました。そのため、日々介護を続けていると「なぜその介助方法なのか」「こういう状態の時ってどうしてたっけ⁈」という疑問にぶち当たり、結論「今までこうだったから」という根拠のない根拠に辿り着くことが多くありました。

 今回の改定では、介護情報データシステムLIFEを活用することにより、今するべき介護の方法やその根拠について、少しずつ理解を深め、実践していくきっかけが出来たと思います。しかし、これを実現していくにはまだまだ課題もあります。

記録システムについて

 介護の現場においては、そもそも記録システムを導入していない事業所がまだまだ多くあります。介護記録システムを導入している事業所でも、排せつや食事量の記録が紙ベースであったりします。ほとんどゼロからのスタートとなる事業所もあるでしょう。これは「※テクハラ」と言われるかもしれませんが、パソコンやスマートフォンに触れてきた若い世代は、比較的受け入れやすいかもしれませんが、施設を長く運営してきたベテラン職員ほどコンピューターアレルギーが出現するかもしれません。世代間格差が生まれる可能性があります。

※テクノロジーハラスメントあるいはテクニカルハラスメントの略で、ITに疎く、コンピューターなどハイテク機器の扱いが苦手な人へのいじめ・嫌がらせのこと

PDCAサイクルって何?

 今回の介護報酬改定でしきりに出てくるワードが「PDCAサイクル」です。PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すことによって、業務の効率化や質の向上を継続的に改善していく手法のことです。

 介護現場におけるPDCAサイクルは以下のように整理されます。

Plan(計画)

 入所者の心身の状況等に係る基本的な情報に基づき、適切なサービスを提供するための施設サービス計画を作成する。

Do(実施)

 サービスの提供に当たっては、施設サービス計画に基づいて、入所者の自立支援や重度化防止に資する介護を実施する。

Check(評価)

 LIFEへの提供情報及びフィードバック情報等も活用し、多職種が共同して、施設の特性やサービス提供の在り方について検討を行う。

Action(改善)

 検証結果に基づき、入所者の施設サービス計画を適切に見直し、施設全体として、サービスの質の更なる向上に努める。

 もともとケアプランの作成は、アセスメントやモニタリングといった過程を経て実施されてきましたが、今回の改定でプラン策定に限らず、介護のあらゆる分野でこのPDCAサイクルが求められることになりました。介護現場は、その不規則な業務形態や激務から勉強時間が十分に確保できず、そもそも「PDCAって何?」から始まることも課題です。

介護現場の意識がついてこない

 今回の改正で介護に「科学的根拠」といキーワードが加わり、介護によってご利用者の自立支援・重度化防止につなげていくという方針が明確に示された形になりました。今まで、個々の主観や経験や感覚に依存してきたものから、大きく進化していく事が求められています。しかし、その意識に介護現場がすぐについていけるかは疑問です。これは、介護業界の大きな転換期となると思います。

 これはすでに示された方針ですので、制度内事業体である我々は、今後その方針に従って主体的に取り組んでいかなければなりません。科学的根拠に基づいた介護は、サービスの質の向上や専門性を高めていく事につながります。それが、介護業界の社会的な評価につながっていくのだと思います。

科学的介護の実践に向けて取り組むこと

 今後の報酬改定では、より自立支援・重度化予防の取り組みに関しての結果が評価される時代になると思います。ですので、今回の科学的介護の推進にしっかりと追従していかなければ、算定できる加算がなくなり、施設の運営に影響を与える可能性があります。ほぼ全ての事業所がスタート地点に立ったばかりの状況ですから、まずは施設全体で取り組む意識作りが大切です。

介護報酬改定と施設の収入に関する構造を現場に落とし込む

 おそらく多くの事業所では、体制届や加算要件の確認などは、生活相談員を中心に事務系の職員が担ってきた部分が多いと思います。しかし、今回の改定では、介護情報システムLIFEへの情報提供が求められるため、必然的に介護に携わる職員の記録や計画、評価が必要になります。それが、今後施設の収入につながってくることを介護現場にきちんと伝える必要があります。激務である介護現場に負担を強いるわけですから、その事によって得られる加算や施設の運営などについても説明が必要となるでしょう。まずは、現場の主任など役職員に、制度の構造などを伝える事が始まりだと思います。これは、介護保険制度、加算の算定要件を理解した生活相談員が担うべき仕事になると思います。

記録システムの手順を伝える

 初めて記録システムを導入する施設はもちろん、そうでない施設も加算を算定するために必要な記録が出てくるため、その手順と必要な記録の内容についてはきちんと説明しておく必要があります。せっかく入力した記録も加算算定に対して不十分であれば、二度手間になってしまいます。このあたりはきちんと整理して説明する必要があると思います。口頭でその都度説明するのも良いですが、できれば操作画面をスクリーンショットで保存して、操作手順を可視化しておく事をお勧めします。最初は手間がかかりますが、あとは職員それぞれがその手順書に沿って記録すれば良いので、ミスも少なくなり漏れもなくなると思います。

誰のための介護であるべきか

 科学的介護はあくまで、ご利用者の生活や意向に沿った介護を提供するための方法でなければなりません。成果が見えず、記録、情報の収集や提供、PDCAサイクルなどが増えるだけでは、職員がモチベーションを保つことも難しくなります。科学的根拠に基づいた介護サービスの提供により、ご利用者の笑顔が増える事を理解して取り組む意識を持ちましょう。[affi id=2]

 いかがだったでしょうか。今回は、科学的介護導入に関する課題と考え方についてお伝えしてきました。今回の介護報酬改定が、職員の質の向上やご利用者の笑顔につながると良いですね。

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