飲酒運転は現在、厳しい行政処分と厳罰が科されるものとなっているが、飲酒運転根絶に向けて、道路交通法の施行規則が変更されます。これには、送迎車輛や訪問のための事務車輛などの社用車も影響するものとなります。
令和4年4月1日より適用となる内容もあるため、送迎車輛などを抱える事業所は注意したいところです。
結論から言うと「施設車輛を使用する前に飲酒のチェックをすることが義務になる」ということです。
今回は、飲酒運転根絶に向けたあらたな制度を確認し、施行規則変更に伴い義務化される内容を確認していこうと思います。
この記事でお話する内容
○飲酒運転根絶に向けた動き
○飲酒運転による行政処分・厳罰について
○施設が車輛を使用する際に義務化されること
飲酒運転の根絶に向けて
飲酒運転による交通事故は、平成18年8月に福岡県で幼児3人が死亡する重大事故が発生などをきっかけに、大きな社会問題となりました。この事件は、一家5人が乗ったRV車が、飲酒運転の車に追突され、そのまま海に転落。幼い兄弟が犠牲となった事故です。
その後、様々な取り組みや世間の声などを受けて、平成19年の飲酒運転厳罰化、平成21年の行政処分強化などにより、飲酒運転による交通事故は年々減少してきている状況です。
しかし、依然として飲酒運転による悲惨な交通事故は後を絶たず、飲酒運転根絶に至っていないのが現状です。
飲酒運転の行政処分
前述の事故をきっかけに、飲酒運転に関する行政処分はより厳しいものとなっていきました。
酒酔い運転(※1)
- 基礎点数 35点
免許取消し 欠格期間3年(※2,3)
酒気帯び運転
- 呼気中アルコール濃度0.15mg/l 以上 0.25mg/l 未満
基礎点数 13点
免許停止 期間90日(※2) - 呼気中アルコール濃度0.25mg/l以上
基礎点数 25点
免許取消し 欠格期間2年(※2,3)
(※1) 「酒酔い」とはアルコールの影響により車両等の正常な運転ができない状態をいう。
(※2) 前歴及びその他の累積点数がない場合
(※3) 「欠格期間」とは運転免許が取り消された場合、運転免許を受けることができない期間
飲酒運転の罰則
飲酒運転による罰則も、より厳しいものとなっています。これだけが抑止力になるわけではないですが、飲酒運転によって多くの命が今も失われていることを考えれば、もっと厳しいものでも良いのかなと思います。
車両等を運転した者
- 酒酔い運転をした場合
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 - 酒気帯び運転をした場合
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
車両等を提供した者
- (運転者が)酒酔い運転をした場合
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 - (運転者が)酒気帯び運転をした場合
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
酒類を提供した者又は同乗した者
- (運転者が)酒酔い運転をした場合
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 - (運転者が)酒気帯び運転をした場合
2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
道路交通法の施行規則変更によるポイント
今回の変更により運用の厳格化の影響が及ぶのは、自動車を使用して業務を行っており、安全運転管理者の選任が必要な介護老人福祉施設等の事業所になります。
より具体的には、乗車定員が11人以上の自動車を1台以上有するところ、その他の自動車を5台以上有するところが該当します。
新しいルールでは、安全運転管理者に個々のドライバーの飲酒チェックが義務付けられることになります。今回の変更について、施行は4月と10月の2回に分かれていますので、それぞれ確認するポイントを以下にまとめておきます。
道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令等の施行に伴う安全運転管理者の業務の拡充について【通達】
令和4年4月1日からの変更点
ポイント
◯ 運転前後のドライバーの状態を目視などで確認することにより、酒気帯びの有無をチェックする。
◯ 酒気帯びの有無について記録し、その記録を1年間保存する。
以上のことが義務化されます。
令和4年10月1日からの変更点
ポイント
◯ ドライバーの酒気帯びの確認をアルコール検知器を用いて行う。
◯ アルコール検知器を常に有効に保持する。
以上のことが義務化されます。
まとめ
今回は、道路交通法一部改正による施行規則の変更に伴う注意点についてお話しました。
まとめ
○施設で車輛を使用する際に、飲酒のチェックを行うことが義務化される。
○施行規則変更の実施は、4月と10月の2段階で行われる。
送迎日誌やアルコール検知器など、年度初めに向けて準備できるところからしていきましょう。